ウクライナのゼレンスキー大統領が、EU加盟を申請しました。これまでNATO加盟を求めていましたが、狙いは何にあるのでしょうか。ロシアの反発は必至とみられ、専門家は「非常に大きな問題」と指摘します。EU側とロシア側がどう出るか、注目されます。
■NATO加盟かなわず…狙いは？
有働由美子キャスター
「ウクライナのゼレンスキー大統領が、EU（ヨーロッパ連合）への加盟を申請する書類にサインしました。どういう狙い、意図があるのでしょうか」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「ゼレンスキー大統領が温めていたカードを、『今だ』と切ったものです。ウクライナはこれまで、軍事同盟のNATO加盟を目指していましたが、プーチン大統領はNATOを目の敵にして、『認めない』と言っています」
「では軍事同盟でなく経済でヨーロッパに仲間入りするんだ、EUに今すぐ入れてほしい、と表明しました。今EUが支援してくれているので、無下にはされないだろう。すると『バックにEUがついている』と見せつけられると、ウクライナ側は考えました」
「『ロシアに支配などされないぞ』とプーチン大統領に向けた明確なメッセージです。同時にウクライナの国内向けにも、『われわれの進む道はこっちだ』と言って国民を結束させ、自分への支持を確かなものにしたいとも考えています」
■ウクライナのEU加盟、実現度は？
有働キャスター
「実際に、ウクライナがEUに入るのは早期にあるのでしょうか？」
小野委員
「本来は簡単ではありません。国が安定していないといけませんし、何年もかけた手続きがあります。歓迎する国も慎重な国もあります。ただこの状況下で、EUヨーロッパ委員会の委員長は『加盟してほしい』と言っています」
有働キャスター
「国際安全保障に詳しい、慶応義塾大学の鶴岡路人准教授にうかがいます。プーチン大統領にとっては、ウクライナがEUに加盟するのはどのくらい嫌なことなのでしょうか？」
鶴岡准教授
「ロシアから見れば、NATO加盟よりはEU加盟の方がましだ、という議論はあるのだと思います。ただ、EU加盟（国）とロシアの勢力圏は全く合致しません。相容れません」
「今回の戦争の目的はウクライナの無力化・中立化・非軍事化で、ロシアの言いなりになるウクライナをつくりたいということです」
「EU加盟というのは西（側）に、ヨーロッパに行ってしまう象徴です。しかも、民主的で自由で経済的に繁栄したウクライナがヨーロッパに行ってしまう。これ自体はロシアが今回止めたかったことなので、EU加盟は非常に大きな問題だと思います」
■武力侵攻を受けたら…EUどう対応？
落合陽一・筑波大学准教授（「news zero」パートナー）
「EU加盟国同士は、主権侵害された場合にどういうアプローチを取るか、条文などで決まっているのでしょうか？」
鶴岡准教授
「NATOが軍事同盟であることに比べると、EUは経済統合（という形）で進んできました。実は条文の中にあり、武力侵攻を受けた時には軍事力を含めて相互に支援すると決まっています」
「条文だけを見ると、NATOで集団防衛を定めた条文と、ほとんど一緒です。論理上は武力攻撃を受けた時にはEUも共同で対処すると。ただ実際、その体制が整っているわけではないので、『安全保障はNATO』ということは基本としては変わらないと思います」
■落合さん「短期で終わらない」
有働キャスター
「1週間前、落合さんは『武力衝突になるのではないか』とおっしゃり、現実になりました。この間、どんなことを考えていましたか？」
落合さん
「ここ数日、プーチン大統領の過去の発言や過去に書かれた論文を読み込んでいました。随分前から、こうなることに対して、外貨準備高を整えるなど、考えて準備してきたんだなと思いました」
「おそらくソビエト崩壊から、彼の中にたまっている何かが、何十年も三十年もかけていろいろつくってきた、政治人生の塊なんだろうなと思います」
「それはプーチン大統領個人というよりは、彼の中にあるソ連の亡霊なのか、ロシアのイデオロギーなのか、いろいろな思いが非常に強固なものとしてあると実感しています。個人の感情というわけではないと思います」
「ただ、経済制裁も西側の反発も織り込み済みで対応されているし、そもそも長く考えていたことなので、今起きていることを基にわれわれが交渉しよう、対策しようと思っても、たぶん効きません」
有働キャスター
「もっと根深い…」
落合さん
「結論としては非常に厄介だし、短期で終わらないと考えた方がいいなと思っています」
（2022年3月1日「news zero」より）
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